中古物件を購入してリノベーションするときに、住宅ローン控除が使えるのかどうか、気になる方は多いのではないでしょうか。
せっかく大きな費用をかけるのですから、控除をうまく利用して少しでも負担を減らしたいですよね。
ただ、控除を受けるためには床面積の条件や所得の上限、入居時期、そして返済期間など、いくつかの決まりがあります。
知らないまま工事を進めてしまうと、「本当は控除が受けられたのに対象外になってしまった」というケースも少なくありません。
そこでこの記事では、住宅ローン控除がリノベーションで適用される条件を分かりやすく整理し、初めての方でも理解しやすいようにまとめました。
これからリノベーションを検討する方にとって、見逃したら損をするポイントを一緒に確認していきましょう。
リノベーションにかかった費用も、条件を満たせば住宅ローン控除の対象となります。
控除額はシンプルに「年末のローン残高 × 0.7%」で計算され、年間最大14万円が10年間にわたり控除されます。
ただし、工事費は補助金などを差し引いた後で100万円を超えている必要がある点に注意しましょう。
この仕組みを理解しておくことで、資金計画の精度が上がり、返済や補助金利用の判断も安心して行えます。
制度の全体像は国税庁の公式ページ 国税庁|住宅ローン控除(増改築等)⇐で確認できます。
さらに、リノベーションの資金計画を立てる際には、控除以外の費用面の知識も欠かせません。
リノベーションにかかる費用は、工事の規模や内容によって大きく変わります。
一般的な目安としては、フルリノベーションなら1,000万円前後、水まわり中心や一部リノベーションであれば300〜700万円程度が相場です。
大きな費用項目としては次のようなものがあります。
解体工事費用:既存の内装や設備を撤去するための費用。スケルトン工事を行う場合は特に大きな割合を占めます。
※「スケルトン」詳しくはコチラ
本体工事費用:間取り変更、内装仕上げ、設備機器交換など。最も大きなコストになります。
諸経費・設計費用:設計や監理、各種申請などにかかる費用。総額の10〜15%程度を見ておくと安心です。
リノベーションの中で、省エネ改修やバリアフリー化に関する補助金を使えば、数十万円単位で費用を抑えられることもあります。
このように、リノベーションの資金計画は「工事費用そのもの」だけでなく、「補助金を活用した後の実質負担」と「住宅ローン控除で戻る金額」を組み合わせて考えることが重要です。
つまり、トータルでいくら出費し、最終的にいくら戻ってくるのかをシミュレーションしておくことが、安心したリノベーション計画につながります。
住宅ローン控除は「借りた額」ではなく年末残高が基準になります。
例えば1,000万円を借りても、初年度の年末残高が950万円であれば、その0.7%=66,500円が控除額です。
そのため、借入額よりも「どの時点でどれくらい残っているか」が重要になります。
加えて、工事費が補助金を受けている場合は、その分を引いた額で100万円を超えなければ対象外です。
省エネ補助金や自治体助成を利用するときは、必ず計算に反映しましょう。
「年末残高等」とは、住宅ローンの年末時点の残高に加えて、条件によって認められる借入残高の合計を指します。
リノベーション費用が比較的小さい場合でも、返済期間が長ければ一定の控除額が見込めます。
一方、返済を早く進めすぎると年末残高が減り、控除額も小さくなるため注意が必要です。
リノベーション時には、住宅ローン控除のほかに投資型減税(住宅特定改修特別税額控除)が使える場合もあります。
ただし、両方を同時に使うことはできず、いずれかを選択する必要があります。
省エネやバリアフリー改修を重視するなら投資型減税、ローンを組んで長期返済をするなら住宅ローン控除と、目的に応じて選ぶのが基本です。
国税庁の比較ページ
国税庁|住宅ローン控除と投資型減税の選択⇐も参考になります。
住宅ローン控除をリノベーションで利用するためには、床面積が50㎡以上という条件を満たす必要があります。
この面積は「登記簿に記載されている床面積」で判断され、バルコニーや共用廊下などは含まれません。
さらにもう一つ重要なのが、自分や家族の居住部分が床面積の2分の1以上を占めていることです。
つまり、店舗や事務所を兼ねた住まいの場合、住居部分が全体の半分以上でなければ控除の対象にならないのです。
この条件は誤解しやすく、工事を進めた後に「控除が使えない」と気づくケースもあります。
工事計画を立てる段階で、登記簿面積を確認し、居住部分の割合を正確に把握することが大切です。
床面積の判定は、必ず登記簿に記載されている面積で行われます。
特にマンションでは「専有部分の面積」が対象であり、エレベーターホールや階段などの共有部分は含まれません。
不動産広告に記載されている「壁芯面積」とは異なるため、購入時やリノベ前には必ず登記事項証明書で確認しましょう。
面積の計算方法を勘違いすると、要件を満たさないリスクがあります。
自宅の一部を店舗や事務所として利用している場合、居住部分が全体の2分の1以上でなければ対象外となります。
例えば延床面積が80㎡で、そのうち40㎡を店舗に使っていると、条件を満たせません。
また、夫婦や親子で共有名義にしている場合は、所有割合に応じて控除を受ける形になります。
持分が小さすぎると控除額も小さくなるため、名義の持ち方も資金計画に影響します。
近年の住宅ローン控除では、新築や中古住宅の取得において40㎡以上でも対象になる特例があります。
しかし、リノベーション(増改築等)の場合は50㎡以上が原則です。
この違いを知らずに「40㎡でも大丈夫」と思ってしまうと、控除を受けられないことがあります。
特にコンパクトマンションや単身向け住宅でリノベを検討する場合は要注意です。
詳細な基準は国税庁の公式サイト国税庁|住宅ローン控除(増改築等)⇐
にも記載されています。
不安があれば、登記簿と照らし合わせて早めに確認しておきましょう。
住宅ローン控除をリノベーションで受けるためには、所得・入居時期・返済期間にも明確な条件があります。
これらは「知らなかった」では済まされず、ひとつでも外れると控除が受けられません。
特に入居期限や返済年数は見落としやすいので、工事のスケジュール段階から意識しておくことが大切です。
控除を受けられるのは、その年の合計所得金額が2,000万円以下の人に限られます。
「合計所得金額」とは給与所得控除後の金額であり、年収とは異なる点に注意が必要です。
例えば年収2,200万円の方でも、給与所得控除後の合計所得が2,000万円を下回れば対象になる場合があります。
逆に副業収入や不動産所得がある方は、意図せず上限を超えることもあるため、事前に確認しておきましょう。
詳しい計算式は国税庁の
合計所得金額とは⇐で確認できます。
住宅ローン控除を適用するには、工事完了から6か月以内に居住を開始することが求められます。
この「工事完了の日」は、引き渡しや検査済証交付の日として扱われるのが一般的です。
例えば工事が遅れ、6か月を過ぎてしまうと控除の対象外になります。
また「家具搬入日」や「引っ越し日」とのズレも要注意です。
確定申告時には住民票で居住開始日を証明するため、工事完了からのタイムラインを逆算してスケジュールを組みましょう。
ローン返済期間は10年以上であることが必須条件です。
短期返済では「長期の住宅取得を支援する」という制度趣旨に合わないため、控除は受けられません。
また、勤務先や親族からの借入れでは、利率や返済条件が通常の金融機関と異なるため、住宅ローン控除の対象外になることがあります。
対象となるのは銀行や住宅金融支援機構などの一般的な金融機関ローンです。
繰上返済をする場合も、返済期間が10年未満にならないよう注意しましょう。
住宅ローン控除は、どんなリノベーションでも使えるわけではありません。
国税庁が定める「増改築等工事」に当てはまる必要があり、その範囲は意外と細かく規定されています。
ここを正しく理解していないと、せっかくローンを組んでも控除が受けられないケースもあるため注意が必要です。
「大規模の修繕」や「模様替え」とは、建築基準法における構造耐力や安全性に影響を与える工事を指します。
例えば柱や梁、耐力壁に関わる改修や、屋根・外壁の大規模な交換などがこれに当たります。
単なる壁紙や床材の張替えといった内装リフォームでは対象外です。
工事計画を立てる際は、設計者や施工会社に「この工事は住宅ローン控除の対象になるか」を確認しておくと安心です。
マンションのような区分所有建物では、専有部分の床面積の過半(2分の1超)を超えるリノベーションが対象になります。
例えば専有面積60㎡のうち30㎡以上を全面的に改修すれば対象になりますが、部分的な改修では認められません。
ただし、1室を全面的に改修する場合は例外的に対象になるケースもあります。
例えばリビング全体をスケルトンにして設備や内装を刷新する工事です。
この場合も、どこまでを「全面改修」とみなすかがポイントになるため、工事証明書を発行できる施工会社に依頼するのが確実です。
住宅ローン控除の対象になる工事には、耐震改修、省エネ改修、バリアフリー改修も含まれます。
例えば断熱性能を高める窓交換や、段差解消・手すり設置なども対象になる可能性があります。
ただし、いずれの工事も国の定める基準を満たし、「増改築等工事証明書」を発行してもらう必要があります。
詳しい要件は国土交通省の
増改築等工事証明書について⇐で確認できます。
住宅ローン控除を受けるためには、工事完了後に申請手続きを正しく進めることが欠かせません。
初年度は必ず確定申告が必要で、2年目以降は勤務先の年末調整で控除を受けられます。
また、リノベーションの場合には「増改築等工事証明書」という特別な書類が求められる点が特徴です。
住宅ローン控除を受けるには、入居した翌年に税務署で確定申告を行います。
ここで控除額が確定し、その後の9年間は会社員であれば年末調整で自動的に控除されます。
ただし、毎年「年末残高証明書」を金融機関から取り寄せて提出する必要があります。
これを忘れると控除が適用されないため、年末に届いた証明書は必ず保管しておきましょう。
リノベーションで住宅ローン控除を申請するには、増改築等工事証明書が必要です。
これは建築士や指定確認検査機関など、国が定めた資格者によって発行される証明書で、「この工事が控除対象である」と証明してくれるものです。
あわせて、リフォームの契約書や工事費内訳書、登記事項証明書なども必要です。
工事を依頼する段階で「住宅ローン控除の証明書を発行できますか?」と施工会社に確認しておくと安心です。
住宅ローン控除は所得税から引ききれない場合、住民税から最大97,500円まで控除できます。
ただし、住民税への振替控除には上限があるため、高額な借入をしても全額が戻るとは限りません。
さらに注意したいのは入居から6か月以内の期限です。
工事が遅れたり、入居日をずらしてしまうと控除の対象外になります。
スケジュールを組む際には「入居→確定申告→年末調整」という流れを逆算し、必要な書類を早めに揃えておくことが大切です。
住宅ローン控除は、リノベーションでも一定の条件を満たせば年間最大14万円×10年の節税効果が期待できる制度です。
ただし、床面積50㎡以上、所得2,000万円以下、入居は工事完了から6か月以内、そして返済期間10年以上といった要件を一つでも欠いてしまうと適用されません。
また、対象工事は「大規模修繕」「過半を超えるリノベーション」「1室全面改修」「耐震・省エネ・バリアフリー改修」などに限られます。
そのため、工事の内容を事前に確認し、増改築等工事証明書をしっかり取得することが重要です。
資金計画を立てるときには、工事費用そのものに加えて、補助金を差し引いた実質負担額や控除で戻る金額まで含めて考えると安心です。
トータルの支出を見える化することで、無理のない返済計画につながります。
リノベーションは大きな投資だからこそ、制度を正しく活用して家計への負担を減らしましょう。
そして、理想の住まいづくりをより安心して進めていただければと思います。