住宅リノベーションを計画する際に、つい見落としがちなのが「換気システムの見直し」です。

とくに最近注目されているのが、熱交換型の第1種換気システムです。

この方式は、外気を取り入れながらも室温を保ちやすく、快適性と省エネ性を両立できるのが大きな魅力です。

しかし、導入には注意点もあり、設計段階からの計画がとても重要です。

この記事では、第1種換気の基本から、リノベーションでの実際の導入メリットと注意点まで、やさしく丁寧に解説していきます。

第1種換気システムとは?リノベーションに適した換気の基本知識

住宅リノベーションを行う際、「断熱」や「間取り」には目が向いても、「換気システム」の選定は後回しにされがちです。

しかし、住まいの快適性や健康、さらには光熱費にまで影響を与える重要な要素こそが、換気設計なのです。

とくに最近注目されているのが「第1種換気システム」です。

これは給気と排気の両方を機械で行う方式で、安定した換気量と室温管理がしやすいのが特長です。

リノベーション時に設計から組み込むことで、冷暖房効率を下げずに常に新鮮な空気を取り込むことができるようになります。

換気設備の選び方次第で、生活の質が大きく変わるのです。


住宅リノベーションにおける換気の必要性

結露、カビ、シックハウス症候群——これらはすべて、換気不足が引き起こす住環境のトラブルです。

とくに高気密・高断熱化が進むリノベ住宅では、自然に空気が出入りしづらくなるため、計画的な換気設備の導入が必須です。

単に“窓を開ける”だけでは十分な換気は確保できず、温熱環境のロスにもつながります

だからこそ、計算された換気計画が重要になるのです。


第1種・第2種・第3種換気の違い

住宅換気には主に3つの方式があります。

第1種換気:給気・排気ともに機械で制御(熱交換可能)
第2種換気:給気を機械、排気は自然に任せる(病院など)
第3種換気:給気は自然、排気を機械で行う(コストが安い)

このうちリノベーションに最適とされるのが第1種換気です。

とくに熱交換型の第1種換気は、冷暖房で整えた室温を無駄にせずに外気と交換できるため、快適さと省エネを両立できます。


リノベで選ばれる換気方式のトレンド

近年では「断熱リノベーション+熱交換型換気」のセットが注目を集めています。

とくに寒冷地や、ヒートショック対策が求められるシニア世代の住まいでは、温度変化を抑える第1種換気が選ばれる傾向にあります。

また、フィルター付きで花粉・PM2.5対策ができるモデルも登場し、アレルギー対策としても選ばれています。

リノベーションでは構造を変えるチャンスがあるからこそ、配管ルートやユニット配置まで最適化できるのが利点です。

熱交換型換気の仕組みと第3種換気との違い

リノベーションで快適な住環境を実現するには、「空気の質」と「温度管理」の両立が欠かせません。

その中心となるのが、熱交換型の第1種換気システムです。

この方式では、排気される暖かい空気の熱を、外から取り入れる冷たい外気に移すことで、エネルギーを無駄にせずに換気を行います。

たとえば、室内が20℃、外気が0℃だった場合でも、給気される空気は18℃前後まで温められてから室内に入ります。

逆に、夏場は暑い外気を冷やしてから取り込むことで、室温の上昇を抑えられます。

この仕組みが、体感温度の安定と省エネを実現する鍵なのです。


熱交換のメカニズムと室温への影響

熱交換換気の核となるのが「熱交換素子(エレメント)」です。

これは室内の排気の熱エネルギーを、外気に伝える装置で、給気と排気が交差しながら熱をやり取りします。

冒頭の図のように、冬場は20℃の室内空気を排気しながら、その熱を使って0℃の外気を18℃程度に温めて室内へ取り込めます。

この温度差の低減は、暖房への負荷を大幅に減らすことができ、冷暖房効率の向上にもつながります。


第3種換気とどう違う?導入後の体感温度と光熱費

第3種換気はコストが低く、導入も比較的簡単ですが、外気をそのまま室内へ入れるため、温度差がダイレクトに影響します

冬なら冷たい空気が直接入り込み、足元が冷える原因になります。

また、室内の湿度バランスも崩れやすく、暖房効率が下がってしまうケースもあります。

一方で熱交換型の第1種換気なら、室温への影響を抑えながら換気が可能なので、冷暖房にかかる光熱費も抑えやすいのが大きな違いです。


気密性能との関係|高断熱住宅での効果

熱交換換気の性能を最大限に発揮するには、住宅の「気密性」がとても重要です。

隙間の多い家では、せっかく温めた空気が漏れたり、意図しない場所から外気が入り込んでしまい、計画通りの換気や熱交換が機能しません

つまり、高断熱・高気密リノベとの併用が前提となるシステムです。

最近では、C値(気密性を表す数値)1.0以下の性能を確保した住宅が増えており、そこにこのシステムを組み込むことで、安定した温熱・空気環境が実現できます

第1種換気のメリット|リノベで得られる快適性と省エネ性

第1種換気システムは、単に「空気を入れ替える」だけではありません。

熱を逃がさずに、快適さと経済性を両立できる優れた仕組みです。

とくに断熱・気密リノベと組み合わせることで、その効果は最大化されます。

ここでは、そんな第1種換気がもたらす代表的な3つのメリットを見ていきましょう。


冷暖房効率が上がる理由

室内温度をできるだけ一定に保ちたいリノベ住宅にとって、熱交換型換気は非常に有効です。

その理由は、「換気時の熱ロスがほとんどない」ことにあります。

一般的な換気では、外から0℃の空気が入り、暖かい空気がそのまま出ていきます。

ですが熱交換型の第1種換気では、排気の熱を使って給気を18℃程度まで温めるため、暖房の負担が減ります。

結果として、エアコンの稼働時間や設定温度が抑えられ、光熱費の削減にもつながります。


結露やカビのリスクを抑える室内環境改善

冬の結露や、押入れのカビは、多くの家庭で悩みの種です。

その多くは、空気の流れが滞って湿気がこもることが原因です。

第1種換気なら、家全体に計画的に空気が流れる設計ができるため、湿気をためずに結露を防ぐ効果があります。

とくにトイレや脱衣所など、水回りの排気ルートがしっかり確保されることで、カビの抑制にもつながります

見た目のキレイさだけでなく、健康的な住環境づくりに直結する換気性能は非常に重要なのです。


花粉・PM2.5対策としての換気性能

春の花粉や、大気汚染物質(PM2.5)などのアレルゲン対策としても第1種換気は非常に効果的です。

多くの熱交換型換気装置には、高性能フィルターが内蔵されており、外気を取り込む際にこれらの物質をしっかりブロックしてくれます。

また、窓を開けなくても24時間換気できるので、花粉の多い時期や交通量の多い地域でも、室内の空気環境を清潔に保てるのは安心です。

小さなお子さまや高齢のご家族がいる家庭にも、非常におすすめの設備です。

第1種換気の注意点|リノベで後悔しないための3つの確認ポイント

第1種換気は多くのメリットがある一方で、導入には注意が必要な点もいくつかあります

とくにリノベーションにおいては、既存構造との相性や施工制限、ランニングコストの見極めが重要です。

ここでは、導入前に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。


ダクト設置とメンテナンスの負担

第1種換気は、各部屋へ給気・排気するためにダクト配管が必要です。

リノベーションの場合、既存の構造にダクトスペースを確保することが難しいケースもあります

とくにマンションや、天井高さが限られている戸建てでは、ダクト経路の設計に工夫が求められます

また、ダクト内部にホコリが溜まると空気の流れが悪くなるため、定期的なメンテナンス(3〜5年ごと)が必要です。

機器によってはメンテナンスしやすい設計になっているものもあるので、選定時には清掃性もチェックしておきましょう


初期費用とランニングコストのバランス

熱交換型の第1種換気は、機器の価格や設置費用が比較的高めです。

導入コストとしては、一般的に40〜100万円前後かかることもあり、戸建てかマンションかによって差も出ます。

また、熱交換を行うためにファンを常時回す必要があるため、月々の電気代も若干発生します。

とはいえ、光熱費の削減や健康面でのメリットを考えれば、中長期的にはコストパフォーマンスが良い設備とも言えます

予算とのバランスを見ながら、全体設計に組み込む判断が大切です。


間取りや天井高への影響と設計時の工夫

ダクト式の換気設備を導入するには、ダクトを通すためのスペース(天井裏や床下)を確保する必要があります

そのため、天井が低い部屋や小屋裏がない場合には、設計上の工夫が求められます

具体的には、ダクトを通す部分だけ下がり天井にしたり、梁のラインに合わせて隠蔽するなどの対応があります。

また、給気口・排気口の位置によっては、冷暖房の効率や生活動線にも影響することがあるため、設計段階から空調・換気・照明までトータルで検討することが重要です。

第1種換気を成功させる設計ポイント|住宅リノベにおける具体事例

第1種換気システムは、正しく設計・施工されてこそ、本来の効果を最大限に発揮します

そのためには、家全体の換気経路、生活動線、メンテナンス性など、さまざまな視点からの事前設計が不可欠です。

ここでは、実際のリノベーション事例から得られた、成功のポイントや工夫を3つご紹介します。


築30年木造住宅での第1種換気リノベ実例

築30年以上の木造戸建住宅では、断熱・気密性が低く、自然換気に頼る構造が多く見られます。

このケースでは、壁・天井の断熱補強と気密テープ処理を併用し、住宅全体を“高気密高断熱仕様”に変換

その上で、1階天井裏を利用してダクト式の熱交換換気システムを配置しました。

これにより、冬の寒さや夏の熱気を感じにくくなり、花粉の時期でも窓を開けずに快適な暮らしが実現しています。


天井懐が低いマンションでの工夫事例

築20年のマンションでは、天井裏の高さ(懐)が少なく、ダクト設置に物理的制限がありました

この場合、水回り(浴室・トイレ)とリビングにだけ集中換気を設計し、残りの居室は壁掛け型の小型熱交換ユニットを採用。

また、ユニットを収納や吊戸棚に組み込むことで、インテリア性も確保しました。

部分的な導入でも、寝室の結露・湿度が改善し、体調の変化を実感されたとの声がありました。


設計段階で注意すべき導線と換気経路

どんな住宅でも共通する成功ポイントは、**「空気の流れを設計すること」**です。

リビングなど人が集まる場所には給気を、トイレや脱衣所など湿気の多い場所には排気を計画的に配置し、空気が一方向に流れるよう設計します。

また、換気ルートが生活動線や照明・家具の配置と干渉しないように配慮することも重要です。

施工後に「ここに給気口があると邪魔…」ということにならないよう、設計段階で生活のシーンを具体的に想像しながらプランを練ることが求められます。

まとめ

リノベーションにおいて、快適さと省エネを両立する住まいを目指すなら、「換気設計」は欠かせない視点です。

とくに熱交換型の第1種換気システムは、冷暖房の効率を下げずに新鮮な空気を取り込み、結露やカビ、花粉対策にも有効です。

一方で、導入にはダクトスペースやコスト、設計の工夫が必要なため、信頼できるパートナーとしっかり計画を立てることが重要です。

リノベの機会に、ぜひ換気設計まで視野に入れた住まいづくりを考えてみてください。

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