オフィスの配線は、見えないけれど日々の仕事を支える大切なインフラです。
机の下でコードが絡まったり、席を増やすたびに工事費がかさむと、思わぬストレスやコストが積み重なります。
オフィス内装の配線計画では、初期費用の安さだけでなく、将来のレイアウト変更や安全性まで考えた選択が欠かせません。
OAフロアは費用は高めでも、配線の自由度と見た目のすっきり感、そしてつまずき事故を防げる安心感があります。
一方で床上配線は導入が手軽で短工期ですが、配線増設のたびに作業が発生し、美観や清掃のしづらさが悩みの種になります。
この記事では10・30・50坪の早見表を使って費用や工期を具体的に比較し、あなたのオフィスに合った最適な配線計画を見つけるお手伝いをします。
オフィスの配線計画では、費用だけでなく将来の使いやすさや安全性も含めて比較することが大切です。
10坪程度なら床上配線が初期コストを抑えやすく、逆に30坪を超えるとOAフロアの総コスト優位性が高まる傾向があります。
理由は、OAフロアは配線増設や移設がしやすく、将来の工事費やダウンタイムを減らせるからです。
たとえば10坪の事務所で配線数が少ない場合、床上配線ならモール工事のみで完了し、1日で業務再開できます。
しかし50坪のオフィスで机が50席並ぶ環境では、床上配線だとケーブルの交差や段差が増え、事故や断線リスクが高まります。
OAフロアなら床下に配線を整理でき、美観も保たれます。
このように坪数・配線量・将来の変更頻度を踏まえて比較すると、長期的にはOAフロアの方がコストを抑えられるケースが多いのです。
10・30・50坪の配線方式別 早見表(概算)
規模 | 床上配線(モール/カーペット下) | OAフロア(置敷式) | ポイント |
---|---|---|---|
10坪 | 初期費用:5〜10万円 工期:半日〜1日 運用:配線増設は都度工事、断線リスク高め |
初期費用:20〜40万円 工期:1〜2日 運用:将来変更がしやすいが初期投資重め |
床上配線がコスト優位。安全性・美観を重視するならOAも検討 |
30坪 | 初期費用:15〜30万円 工期:1〜2日 運用:机移動ごとに配線調整が必要 |
初期費用:60〜120万円 工期:2〜3日 運用:床パネル開閉で配線変更が容易 |
レイアウト変更が多いならOAが長期的に有利 |
50坪 | 初期費用:25〜50万円 工期:2〜3日 運用:段差・配線交差が多く安全面に懸念 |
初期費用:100〜200万円 工期:3〜4日 運用:安全性・美観・将来コストで優位 |
50坪以上ならOAが標準的。総合コストでOAが逆転するケース多数 |
10坪前後の小規模オフィスでは、床上配線の方が初期費用を抑えやすいです。
モールで壁際を配線すれば工事は半日〜1日で完了し、施工費も数万円程度で済むことが多いです。
また、退去時の原状回復もモール撤去とカーペット張り替えで対応でき、コストが低めです。
ただし、配線密度が高く、机が密集する場合は注意が必要です。
ケーブルが床を横断するとつまずき事故や断線のリスクが増えます。
美観や安全を重視するなら、小規模でもOAフロアを検討する価値があります。
30坪規模になるとOAフロアのコストメリットが見えやすくなります。
初期費用は坪あたり2〜4万円ほどかかりますが、配線を床下に収められるため見た目がすっきりし、掃除もしやすくなります。
また、会議室やデスクの配置変更があっても、床パネルを外して配線を引き直すだけで済むため、移設費用とダウンタイムを抑えられます。
さらに、床高が50mm以上取れる物件であれば、LANや電源の配線計画が柔軟になり、将来の機器追加にも対応しやすくなります。
頻繁にレイアウト変更がある会社では、この段階でOAフロアに投資する方が総合的にお得です。
50坪規模のオフィスではOAフロア導入がほぼ標準といえます。
床上配線を選んだ場合、配線の本数が増えるほどモールやカーペットの段差が多くなり、転倒事故やケーブル破損の可能性が高まります。
その結果、床上配線だと修理や再配線にかかるコストが積み重なり、長期的にはOAフロアより高くつくケースも少なくありません。
OAフロアであれば、配線が床下に収納されて通路の安全性とオフィス全体の統一感が向上します。
来訪者や社員が安心して歩ける環境は、生産性や企業イメージの向上にもつながります。
見た目・安全・将来コストを数値で比較すると、50坪以上ではOAフロアが有利といえるでしょう。
配線計画を考えるときは、まず「どんな方式があるのか」を整理しておくと判断がスムーズです。
大きく分けると置敷式OAフロア、支柱式OAフロア、床上配線の3種類があります。
それぞれ特徴やコスト、施工期間が異なり、オフィスの広さや床条件により向き不向きがあります。
ここでは3方式の特徴を具体的に解説し、あなたのオフィスに合った選択肢を見極めやすくします。
置敷式OAフロアは、既存の床にパネルを「敷き詰める」タイプです。
床高は40〜50mmが標準で、耐荷重は3000N(約300kgf)程度あり、一般的なオフィス什器なら十分対応できます。
施工は比較的短期間で、30坪なら2〜3日程度で完成するケースが多いです。
パネルを外して配線ルートを変えられるため、増席や会議室追加時に柔軟に対応できます。
概算単価は1㎡あたり5,000〜12,000円(坪あたり2〜4万円)が目安です。
床の仕上げ材をそのまま再利用できる場合は、コストをさらに抑えられることもあります。
支柱式OAフロアは、鋼製の支柱で床を支え、その上にパネルを載せる方式です。
床高は60〜150mmまで調整できるため、大量の配線や空調ダクトを収めるのに向いています。
サーバールームや金融機関など、高い配線自由度や重量対応が必要な空間によく採用されます。
施工は置敷式より日数がかかり、30坪で3〜5日程度が目安です。
概算単価は1㎡あたり10,000〜16,000円(坪あたり3〜5万円)と置敷式より高めですが、配線トラブルを避けたい場合や特殊な什器を置く場合に有効です。
床上配線は、既存床をそのまま活かしてケーブルモールやOAタップで配線する方法です。
最大のメリットは初期費用の安さと工期の短さで、10坪程度なら半日で完了します。
退去時もモール撤去とカーペット張り替えだけで済むため、原状回復コストも低く抑えられます。
ただし配線が増えるとモールが目立ち、段差によるつまずきやケーブルの断線リスクが高まります。
掃除機が引っかかる、見た目が雑然とするなど、日常の使い勝手に影響が出ることもあります。
美観や安全性を重視するなら、将来的にOAフロアへの切り替えを検討しておくと安心です。
OAフロアも床上配線も、見積りをよく見ると複数の費目で構成されています。
材料費だけで判断すると「高い」と感じがちですが、実際は施工や養生、撤去・産廃処理など多くの作業費が含まれます。
これらの費用を把握することで、見積りの妥当性を判断しやすくなります。
ここでは主要な費目を分解して、どこにコストがかかるのかを具体的に見ていきます。
見積りの大半を占めるのが材料費と施工費です。
材料費にはOAパネルや支柱、ケーブルモールなどが含まれます。
施工費は人件費で、施工日数や職人の人数に比例して増えます。
さらに、見落としやすいのが副資材費や養生費です。
副資材にはパネルを固定するクリップやレベル調整部材、配線用のジャンクションボックスなどが含まれます。
養生費は、廊下やエレベーターの床を保護するためのシートや養生板の設置・撤去にかかる費用です。
残材運搬・産廃処理費、現場管理費、諸経費も含めて見積りが作られるため、単純な坪単価だけでは比べられないことが分かります。
費用と業者選びについて詳しくはコチラ→【法人向け】オフィスの内装設計で失敗しない費用の目安と業者選びのポイントと、費用を徹底比較して最適プランを見つける方法
配線計画では、電源コンセントやLAN、電話の増設工事が必要になることがあります。
1口あたりの電源工事は5,000〜10,000円、LAN配線は1回線あたり15,000〜25,000円が目安です。
オフィスによっては、床下に配管を通すコア抜きや分電盤の容量増設が必要になる場合もあり、追加費用が発生します。
設計段階で必要数をきちんと洗い出しておくと、後からの追加工事を減らせます。
特にフリーアドレスやハイブリッドワークを想定しているなら、将来の端末増加も見込んで余裕を持たせることが重要です。
OAフロアを設置すると床が上がるため、出入口や建具のクリアランスに影響が出ることがあります。
スロープや框段差の製作、ドアのカットや金物調整が必要になるケースでは追加費用が発生します。
特にバリアフリー法や消防法の基準を満たすために、段差高さや傾斜角度に制約がある点には注意が必要です。
これらの調整費用を見積りに含めておかないと、工事直前に追加見積りが発生するリスクがあります。
事前に現場調査でクリアランスを確認し、必要な調整を計画に盛り込んでおきましょう。
オフィスの配線方式は、導入時の費用だけでなく運用コストや安全性への影響を考えることが重要です。
床上配線は初期費用を抑えられますが、増席や会議室追加のたびに配線工事が発生し、作業中は業務が止まるリスクもあります。
OAフロアは初期投資が高いものの、レイアウト変更時の手間やコストを大幅に削減できます。
さらに安全性や美観、法令遵守も企業価値に直結します。
ここでは運用時に意識すべきポイントを具体的に見ていきましょう。
OAフロアは床パネルを外すだけで配線ルートを変えられるため、レイアウト変更の作業が短時間で済みます。
30坪オフィスなら、配線追加工事は半日〜1日で完了することも珍しくありません。
一方、床上配線ではモールを外して再敷設し、カーペットの張り替えも必要になるため、工期が長くコストもかさみます。
また、工事中は通路が使えなくなるため、社員の作業効率も低下します。
頻繁に席替えや機器増設がある企業では、長期的に見るとOAフロアの方が総コストを抑えやすいです。
床上配線では、モールの段差につまずく事故や、ケーブル被覆の摩耗による断線が起こりやすくなります。
特に通路を横断する配線は、消防法や労働安全衛生法の基準に抵触する可能性もあります。
OAフロアはケーブルを床下に収めるため、歩行面がフラットになり事故リスクを大きく減らせます。
さらに配線が密集して熱がこもると発火リスクが高まりますが、OAフロアなら通気性が確保され、温度管理がしやすくなります。
安全性やコンプライアンスを重視する企業では、OAフロアが標準仕様とされる理由の一つです。
消防法や労働安全衛生法の基準について詳しくはコチラ→総務省消防庁 電気火災防止資料( 総務省消防庁より)
床上配線はケーブルやモールが露出するため、来訪者から雑然とした印象を持たれることがあります。
OAフロアで床面をすっきり見せると、清掃がしやすく、来客や面接時の印象も良くなります。
特に採用活動が盛んな企業では、清潔で整ったオフィス環境がブランディングにつながります。
さらにケーブルが床下にあることで掃除機が引っかからず、日常の清掃時間も短縮できます。
維持管理負荷の少なさは、長期的なコスト削減にも貢献します。
配線方式の選択は、単に費用だけで決めると後悔することがあります。
建物の条件、業務の特徴、将来の計画を総合的に考えると、どちらを選ぶべきかが見えてきます。
ここでは3つの視点からチェックポイントを整理し、判断フローとして活用できる形にまとめます。
まず建物の条件を確認しましょう。
OAフロアを設置するには、床高が40mm以上必要です。
天井高が低い場合は、OAフロアを敷くと圧迫感が出る可能性があります。
また、床の耐荷重が不足していると重いパネルや什器を置けません。
ビルの避難経路や防音性能にも影響するため、ビル管理会社や内装業者と事前に調整が必要です。
これらの条件を満たさない場合は、床上配線の方が現実的です。
建物条件と安全基準を考慮する重要性について詳しくはコチラ→【総務・経営者の方必見のBCP対策】避難動線と業務効率を両立させるオフィス設計のコツ
次に、自社の業務特性を洗い出します。
パソコンや複合機の台数、会議室の数、使用する通信機器の種類をリストアップし、配線量を把握します。
情報セキュリティの観点からケーブルを露出させたくない場合も、OAフロアの方が向いています。
さらに、将来的に増員やフリーアドレス化を予定しているなら、配線を頻繁に変更する可能性が高いと判断できます。
その場合は初期費用が高くても、OAフロアを導入する方が長期的には合理的です。
最後に、退去やリニューアル時の計画も考えておきましょう。
床上配線は原状回復費が安く済みますが、OAフロアは撤去・産廃費用が別途必要です。
長期入居を予定しているなら「OAフロア」、短期入居なら「床上配線」といった判断ができます。
また、B工事や分離発注が可能かも確認してください。
発注方法によって費用が大きく変わるため、相見積りを取りつつ適切な調達方法を選ぶことが重要です。
こうした条件を整理すれば、自社に最適な配線計画が見えてきます。
オフィス内装 配線計画は、初期費用だけでなく将来のレイアウト変更や安全性を考えて選ぶことが大切です。
10坪前後なら床上配線が低コストで有効ですが、配線密度が高い場合や安全性を重視するならOAフロアを検討しましょう。
30〜50坪以上のオフィスではOAフロアが長期的なコスト・美観・作業効率で優位になります。
費用内訳や工期、段差調整などを事前に把握しておけば、追加見積りやトラブルを防げます。
また、将来のフリーアドレス化や増員計画も視野に入れ、総コストで判断することが失敗しないポイントです。
迷ったら相見積りを取り、複数パターンを比較しましょう。
あなたのオフィスにとって最適な配線計画を選ぶことで、働きやすく安全な環境が整い、社員の生産性も自然と高まります。