
縦長オフィスは、限られた横幅と長い奥行きをどう活かすかがポイントになります。
通路を広く取れば席数が減り、席数を詰めれば動線や空調に無理が出てしまう。
そんな悩みを抱える企業は少なくありません。
実は、縦長レイアウトならではの特性を理解し、定石を押さえるだけで、席数を確保しながら集中しやすい空間をつくることができます。
特に「動線のループ化」や「帯状ゾーニング」は、少ないコストで大きな効果が期待できる代表的な手法です。
今回は、縦長のフロア形状を活かしきる7つのレイアウト定石を、図面と一緒にわかりやすく紹介します。
家具配置の考え方や通路寸法、ゾーニングのコツも交えて解説していきます。

縦長オフィスでは、まず形状そのものの癖を見抜くことが重要です。
横幅が狭く、奥行きが深い空間では、通路と什器の並び方が固定化しやすいため、初期の設計判断がレイアウト全体を左右します。
特に注目すべきは、「柱スパン」と「コア(EV・水回り)の位置」です。
柱スパンが狭いと可動範囲が限られますが、逆に均一なスパンであれば什器をモジュール化でき、配置効率が大きく向上します。
さらに、コアが片側に偏っている場合は入口周辺のゾーニングが鍵になります。
図面では、このスパンと抜け道を事前に把握し、レイアウト全体の骨格を作ることが欠かせません。
内部リンク:⇒【オフィスゾーニング完全ガイド】初めての内装でも失敗しない配置戦略とは
縦長空間では、**柱と柱の間隔(スパン)**がレイアウトの起点です。
スパンが2700〜3600mmであれば、デスク島(2列または4列)をきれいに収めることができます。
逆に不均一なスパンの場合は、什器を標準寸法ではなくカスタムするか、収納や植栽で「ずらし」を作るとレイアウトが安定します。
エレベーターホールや給湯・トイレの位置は、ゾーニングの“初手”を決める要素です。
コアが端にある縦長オフィスでは、入口から執務エリアまでの“抜け”をどう確保するかが重要になります。
執務席と来客導線を交差させないことで、混雑感と視線ストレスを軽減できます。
縦横比が大きい空間では、見通しと音の直進が避けられません。
長い奥行き方向に視線や音が抜けるため、集中席と会話帯を分ける「節」の設置が効果的です。
吸音壁や収納壁、植栽帯を配置することで、心理的な奥行きが緩和されます。

縦長オフィスのレイアウトでは、席数を最大化するための「動線設計」が非常に重要です。
ポイントは、無理に通路を広げすぎないことと、デッドエンドを作らないことです。
主通路は900〜1200mm、島間は600〜800mmを目安にすると、快適さと席数確保の両立が可能です。
また、通路を一筆書きのようにループ化することで、行き止まりを防ぎ、災害時の避難経路にもなります。
内部リンク:⇒
【総務・経営者の方必見のBCP対策】避難動線と業務効率を両立させるオフィス設計のコツ
主動線は人がすれ違える1200mm、島間は椅子の引き幅を含めて最低600mmが基本です。
デスクの配置は奥行き600mmを基準とするとレイアウトが安定します。
縦長形状ではこの「幅の最小限化」が席数の決め手になります。
通路を袋小路にせず、入口と奥をつなぐループ状の導線を意識しましょう。
特に避難経路として有効で、BCPの観点でも大きなメリットがあります。
標準的な奥行き600mmでも十分業務は可能です。
ただし配線処理を床上にするかOAにするかで、通路や島間の寸法が変わります。
OAフロアの有無を検討することも忘れずに行いましょう。
外部リンク:⇒OAフロアと床上配線、どちらがいいの?(KOKUYO)
縦長レイアウトでは、入口から奥にかけて来客帯 → 共同帯 → 執務帯とゾーンを分けると、交錯を最小限に抑えられます。
この段層化により、来訪者と社員の動線が混在せず、業務効率と集中力が両立します。
入口付近に来客エリアを設け、中間に会議室、奥に執務席を配置するのが基本です。
交差動線を最小限にすることで、集中環境の質が上がります。
縦長オフィスでは会議室を一点に集中させると、導線が混雑しがちです。
複数の小会議室を縦方向に分散することで、混雑の分散と効率的な活用が可能になります。
奥行方向に並べることで、音や視線の交錯を防ぎつつ、省スペース化が可能です。
間仕切りはガラス+吸音パネルを組み合わせると圧迫感を減らせます。

縦長空間では、入口付近と奥で明るさ・音・温度が大きく変わります。
この差を放置すると、働きやすさや集中度が低下します。
収納壁や吸音壁を「節」として配置し、空調や照明を分割制御することで、この偏りを緩和できます。
特に吸音壁+植栽の組み合わせは、見た目にもやさしい印象を与えます。
奥行方向にまっすぐ音と視線が抜けないように、等間隔で節をつくるのがポイントです。
吸音パネルや収納壁、観葉植物を組み合わせると自然に区切れます。
LED照明は、間隔と色温度を揃えると奥行方向のムラを抑えられます。
自然光が入る側と奥側で、色温度を変える補正も効果的です。
空調が届きにくい奥側は、人が密集しないゾーニングにするのが鉄則です。
必要に応じてサーキュレーターの追加や配管の調整も検討しましょう。
縦長オフィスの改善は、大がかりな改修をしなくても十分効果を出せます。
まずは動線・照明・収納・植栽のような低コストな部分から手をつけるとよいでしょう。
席数や集中度を変えたいとき、最初に見直すべきは「通路」と「照明」です。
照明計画と什器配置の見直しだけでも、大きな改善効果が見込めます。
中期的には、吸音対策と家具更新で集中環境を強化しましょう。
会議室の位置を変えることで、動線も整理されます。
将来的に席数の変動が見込まれる場合は、可変性を高める設計を検討してください。
フリーアドレスとモジュール家具を組み合わせることで、長期的なレイアウト変更に柔軟に対応できます。
縦長オフィスは、横幅に制約がある分、形状の特性を活かした戦略的なレイアウト設計が欠かせません。
通路と什器の寸法、ゾーニング、視線や音の処理を丁寧に組み立てることで、席数を増やしつつ集中力も保てる環境をつくることができます。
特に、帯状ゾーニングとループ導線は、低コストで効果が出やすい手法です。
さらに、吸音壁や照明の配置改善など、後から足せる対策も豊富にあります。
限られた空間を、最大限に活かすレイアウト戦略を取り入れてみてください。
