落ち着いた空間でお客様を迎える和食店には、和モダンな内装デザインがぴったりです。
伝統と現代性を調和させたデザインは、ブランディングにもつながります。
本記事では、2025年の和モダン内装のトレンドや、素材・色・照明・席配置などの実践ポイントをわかりやすく紹介します。
「和モダンにしたいけど、どう始めたらいいの?」とお悩みの方に役立つヒントが満載です。
2025年の和モダン内装デザインでは、「和」の本質をモダンに昇華させた雰囲気の空間づくりが注目されています。
単なる和風インテリアではなく、素材・構成・演出のすべてが洗練された“調和”を重視するのがトレンドです。
以下では、特に注目される3つのポイントをご紹介します。
和モダンの基本は、自然素材のもつ温かみと、現代的な、必要最低限の要素のみで構成された、無駄のないシンプルなデザイン(ミニマルデザイン)の融合です。
無垢材や和紙、石材などの素材が持つ“素朴な質感”を活かしつつ、装飾を抑えて余白を活かした空間を作るのが主流になっています。
たとえば、壁面は珪藻土の左官仕上げ、天井には木目を強調した無垢材のルーバー天井などが好まれます。
素材を多用せず、「引き算の美学」を意識することで、落ち着いた高級感を演出できます。
2025年の和モダンでは、空間に「余白」を設けることが重視されています。
席の間隔や装飾の量をあえて控えることで、空間に“間(ま)”が生まれ、心地よい落ち着きが醸し出されます。
たとえば、通路に十分な幅を取り、席の間にも余裕を持たせることで、会話が響かず、落ち着いた雰囲気を保つことができます。
この「間」の設計は、空間演出に成功すれば、来店者の印象に強く残り、再来訪にもつながる重要な要素です。
近年の内装設計では、環境への配慮や地域性の活用も取り入れられています。
地元産の木材や伝統工芸素材を使うことは、店舗のブランディングだけでなく、持続可能性にも貢献します。
たとえば、岐阜県の美濃和紙を照明に使用したり、長野県産の漆喰を壁材に使うことで、素材の物語性が店舗の個性を際立たせます。
こうした要素は、顧客の共感を呼び、SNSでも拡散されやすい「語れる空間」を生み出します。
和モダンな内装を成功させるためには、空間の印象を大きく左右する素材選びが欠かせません。
自然素材の質感を活かしながらも、現代的な清潔感や使い勝手を両立することが重要です。
ここでは、和モダン空間に適した素材と、それぞれの特徴・注意点について解説します。
和モダン空間に取り入れられる素材には、無垢材・和紙・珪藻土・竹・漆喰などがあります。
無垢材は木目の表情が豊かで、温もりある雰囲気をつくりやすく、床や天井、カウンターなどに適しています。
和紙はやさしい光を通す特性があり、照明器具やパーテーションに使うと上品な雰囲気を演出できます。
珪藻土や漆喰は調湿性や脱臭効果があるため、飲食店の壁材としても人気です。
たとえば無垢材は、高級感や断熱性に優れる反面、反りや割れのリスクがある点に注意が必要です。
珪藻土や漆喰は、質感が独特で吸湿性に優れる一方、仕上がりにムラが出やすく、施工技術が問われます。
和紙は美しい透け感が魅力ですが、耐久性に劣るため、設置場所や保護素材との組み合わせが必要です。
このように、各素材には特性と使いどころがあり、用途とメンテナンス性を見極めた選定が求められます。
和モダンな素材は魅力的ですが、飲食店としての衛生性や維持管理のしやすさも考慮することが大切です。
たとえば、無垢材は床よりもカウンターや壁面に使うと摩耗が抑えられ、耐久性能が落ちずに長持ちします。
珪藻土も、水回りには使用を避けて、乾燥しやすい客席側に限定すればメンテナンス性が向上します。
コスト面では、突板(つきいた)やメラミン素材と組み合わせて高級感を演出しながらコストを抑えるという方法もあります。
和モダンな和食店では、色使いや照明によって空間の印象が大きく変わります。
特に、食事をより美味しく見せたり、落ち着きと高級感を演出したりするために、色と光の設計はとても重要です。
ここでは、配色・照明機器の選び方・時間帯に合わせた演出法をご紹介します。
和モダン内装でよく使われるのは、ベージュ・墨色・濃茶・深緑などの落ち着いた色合いです。
これらの色は視覚的にリラックス効果があり、和の素材と調和しやすいため、空間に統一感をもたらします。
また、アクセントとして金・朱・藍などを部分的に取り入れると、空間に奥行きと上品さが加わります。
色は「壁・床・天井・家具・装飾」のバランスで考えることが大切です。
和モダンの照明設計では、直接照らさず、やわらかく包み込むような光の演出が主流です。
天井裏や壁面に仕込む間接照明は、空間の陰影を引き立て、落ち着いた雰囲気を演出します。
行灯(あんどん)型の照明は、和紙や麻布のシェードを通じて優しい光を放ち、和の情緒を高めます。
レールライトはスポット照明として活用し、カウンターや料理の見栄えを引き立てる演出が効果的です。
昼間は自然光を活かした明るく開放的な空間、夜は照度を抑えてムーディな雰囲気を演出するなど、時間帯に応じた照明調整も重要です。
たとえば、障子越しの自然光を昼に取り入れ、夜は調光可能なダウンライトで落ち着いた印象を作ることで、昼夜で別の表情を持たせることができます。
季節や天候に応じた照明演出ができるよう、照明設計に柔軟性を持たせることが理想です。
和モダンな空間を活かすには、素材や照明だけでなく「席配置と動線設計」がとても重要です。
席の配置次第で、空間の印象・居心地・客単価まで変わってくるため、設計段階でしっかりとプランを立てましょう。
以下では、カウンター・個室・通路などのレイアウトと動線の考え方を解説します。
カウンター席は、料理人との距離が近くなるため臨場感があり、少人数の利用者に人気です。
一方、テーブル席はグループ客向け、個室は接待や会食利用に向いており、それぞれのニーズに応じたゾーニング(エリアごとの空間づくり)が重要です。
理想的には、入口近くにテーブル席、奥に個室、その中間にカウンターを配置することで、混雑や音の干渉を防ぎながらプライバシーも確保できます。
動線設計は、スタッフの効率的な動きと、来店者のストレス軽減を両立させるものです。
厨房から客席までの動線が直線的で、すれ違いが少ないレイアウトにすると、オペレーションがスムーズになります。
また、客席間の通路幅をゆったり取ることで、食事中に人の往来が気にならず、ゆったりとした滞在時間を提供できます。
こうした設計は、回転率を落とさずに満足度を高めるポイントとなります。
お客様の視線や動きに配慮したレイアウトは、居心地の良さと印象の良さに直結します。
たとえば、入口から店内が見通せすぎると落ち着かないため、間仕切りや格子で視線を和らげる工夫が効果的です。
また、壁を背にできる席は安心感があるとされ、心理的にくつろげる空間設計につながります。
照明の当たり方や席から見える景色まで考慮することで、心地よい「間」と「視線の流れ」を演出できます。
和モダンな内装は、シンプルで落ち着いた美しさが魅力ですが、実現するには慎重な設計判断が求められます。
「和」の要素が強すぎると古くさくなり、「モダン」に寄りすぎると和の趣が薄れるため、バランス感覚がとても重要です。
ここでは、成功のために押さえるべき視点と、実践的なアドバイスをご紹介します。
和モダンを目指す際に最も多い失敗は、「和」要素を盛り込みすぎて古典的・重苦しい印象になることです。
たとえば、格子・畳・障子・行灯などを全て組み合わせると、統一感よりも「和風旅館」のような印象になりかねません。
空間の7割をモダン、3割を和で構成する「比率設計」を意識すると、洗練された和モダンに仕上がります。
アクセント程度に和素材や照明を使う方が、空間のメリハリも出てバランスが良くなります。
設計前には、まず店舗のコンセプトを明確に言語化することが重要です。
その上で、予算・席数・厨房機器などの要件を整理し、プロのデザイナーと連携してプランを具体化します。
工事前には、スケルトン・解体・設備計画の有無も確認が必要で、和素材を使用する場合は仕上がり精度や乾燥時間にも注意が必要です。
工期・動線・照明・家具まで一貫して計画することで、内装とオペレーションの整合性が保てます。
自分の頭の中の「理想の和モダン空間」を正確に伝えるのは、実はとても難しいものです。
そこで有効なのが、参考写真・スケッチ・マインドマップ・色見本などを活用したビジュアルコミュニケーションです。
デザイナーとの認識のズレを防ぐためにも、曖昧な表現は避け、「どこを重視するか」を明確にして伝えることが成功のポイントです。
実績が豊富で、言葉にしきれないイメージまで汲み取ってくれるパートナーを選ぶと安心です。
和食店の魅力を最大限に引き出すには、和モダンな内装デザインがとても効果的です。
2025年のトレンドを押さえながら、素材・照明・席配置・動線設計などを丁寧に計画することで、居心地の良い空間が生まれます。
また、バランス感覚や伝え方も成功のポイントとなりますので、準備段階からビジュアルや具体的なイメージを共有し、理想の店舗づくりを進めていきましょう。
お客様の心に残る空間づくりを目指して、細部まで丁寧に設計していくことが、和モダン内装の本質です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この記事が皆さんの参考になればとても嬉しいです。
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