
リノベーションを検討するとき、多くの人が「予算を増やせば理想に近づく」と考えがちです。
しかし、1500万円という高額予算でも、全てを盛り込むことが不可能な場合があります。
マンションのリノベーションには、配管や床構造、管理規約による制約など、見えない部分にコストがかかるケースも少なくありません。
このような“コストを食う場所”をしっかり理解しておくことで、後悔のない賢い予算配分ができます。
本記事では、設計士が実際の現場で「やらない選択」を勧める箇所を、10項目に分けて具体的に紹介します。
必要な部分とそうでない部分を明確に切り分けることで、1500万円という予算を最大限活かすリノベーションが可能になります。
また、費用配分や補助金などの詳細は、関連記事でも詳しく解説しています。
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→【2025年最新版】住宅リノベーション費用の全体像|間取り変更や設備刷新にかかるコストとは?
→住宅ローン控除が適用されるリノベーション費用の条件まとめ|床面積・所得・入居時期・10年返済を分かりやすく解説します。
→フルリノベの住宅ローン活用術|2025年フラット35リノベの要件・手続き・注意点について解説します
マンションリノベーションで1500万円という予算は、決して少なくはありません。
ただし、どこにお金をかけ、どこを割り切るかの判断が最も大切です。
特にマンションは戸建てと異なり、管理規約や共用部の制約、PS(パイプスペース)の位置制限、構造体を壊せないといった技術的なハードルがあります。
そのため、表面的なデザインだけを優先してしまうと、後から「ここにお金をかけるべきだった」という後悔につながることも少なくありません。
逆に、不要な部分を**「やらない」という選択を積極的に行うことで、生活の質を下げずにコストを抑えることが可能です。
この考え方が、結果としてより満足度の高いリノベーション**につながります。
デザインのこだわりはもちろん大切ですが、優先順位を間違えると予算が膨らむ原因になります。
たとえば、輸入タイルや特注の造作家具などは、最初の段階では後回しにすることで、全体のバランスを崩さずに済みます。
リノベーションでは、構造補強や配管の更新、断熱性能の確保といった見えない部分こそが長期的な住みやすさを左右します。
これらにしっかり予算を確保しておけば、将来的な修繕コストを抑えることもできます。
1500万円あっても、全ての部屋を一気に仕上げるのは現実的ではないケースが多くあります。
特に80㎡を超えるマンションでは、リビングと水回りを優先し、個室は最低限の表層仕上げにとどめるなど、エリアごとの配分がポイントです。
たとえば、キッチンとリビングを優先的に刷新するだけでも、生活の快適性は大きく変わります。
一方、使用頻度の少ない部屋まで造作収納や床暖房を入れると、コストに跳ね返るだけでなく、全体の完成度を下げる原因になります。
キッチン・浴室・トイレなどの住宅設備は、グレードを上げればキリがありません。
ハイグレードなシステムキッチンは1台で300万円を超えることもあります。
しかし、実際の暮らしでは、中位グレードでも十分な性能とデザイン性を確保できることが多いのです。
むしろ、配管や下地施工などの基盤部分に予算を回した方が、長く快適に暮らせる住まいになります。

リノベーションで費用が膨らむのは、**必要な工事よりも「なくてもいい工事」や「仕様の選びすぎ」**が原因であることが多いです。
ここでは、実際の現場で「やらない選択」をおすすめすることが多い10のポイントを紹介します。
造作家具は空間にぴったり合い、見た目も美しく仕上がります。
しかし、素材と製作コスト、施工手間がかかるため、1箇所でも数十万円になることもあります。
既製品の家具と組み合わせることで、コストを抑えながらデザイン性を保てるケースも多いです。
床暖房は快適性の向上に優れていますが、施工面積が広いほど一気にコストが上がります。
リビングなど滞在時間が長い場所に絞って導入すれば、快適性とコストのバランスが取れます。
キッチンやバスルームは高額になりやすい箇所です。
見た目や機能性を重視しすぎると、1箇所で数百万単位の出費になることもあります。
標準グレード+部分カスタムで十分満足できる住まいをつくることは可能です。
間接照明や天井造作は空間をおしゃれに見せますが、造作工事と照明計画費がかさむため、要注意です。
リビングの一部など、ポイントを絞ることで十分な演出が可能です。
室内窓や建具をオーダーすると、既製品の2〜3倍のコストになる場合があります。
デザイン性を重視しすぎず、既製品と塗装や金物の工夫で雰囲気を出す方法もおすすめです。
見た目にこだわりすぎると、施工も複雑化します。
既製品をベースにカウンターや収納を工夫する方が、実用性とコストのバランスが取りやすいです。
天然無垢材のフローリングは人気ですが、メンテナンス性やコストを考えると全室施工はおすすめできません。
主要な部屋に限定することでコスト削減が可能です。
大規模な間取り変更は、解体・配管・配線工事のコストが一気に膨らみます。
配管が集中するPS(パイプスペース)まわりの移動は特に費用がかかるため、慎重な判断が必要です。
スポットライトや間接照明を多用すると、照明機器だけでなく配線工事費もかさみます。
必要な場所に絞って設置することで、コストを大きく抑えることが可能です。
デザイン重視のオプションを増やしすぎると、“ちりつも”で数百万円単位の差になることもあります。
内装デザインは、素材・色・照明バランスで雰囲気を出す工夫が効果的です。

リノベーションの計画で、限られた予算をどう配分するかは、最も大きな分かれ道です。
やりたいことをすべて盛り込むのではなく、暮らしに直結する部分から優先順位をつけることで、1500万円という予算を最大限に活かせます。
特にマンションの場合、間取り変更や水回りの移動などの工事は一箇所の判断で費用が大きく変わるため、最初のプランニング段階で優先順位を明確にしておくことが重要です。
このステップを省略すると、後から「もっとここにお金をかけておけば…」という後悔につながるケースが少なくありません。
予算配分を考えるとき、デザインよりも生活導線を軸に考えると、必要な工事が自然と見えてきます。
たとえば、キッチンとダイニングが分断されている間取りでは、壁を抜いて一体化するだけで暮らしの快適さが大きく向上します。
一方で、あまり使わない個室や収納にまで大規模な改修を行うと、費用がかさむだけで実生活への効果は少なくなります。
よく動く・よく使う場所から優先することが、コスト効率の良いリノベーションの基本です。
優先順位を明確にするために、費用対効果の見える化はとても有効です。
工事項目ごとに「コスト」と「暮らしへのインパクト」を整理すると、本当に必要な部分と後回しにできる部分がはっきりします。
たとえば、床暖房を全室に入れるのではなくリビングだけにする、特注家具を減らす、などの選択で数十万〜数百万円の差になることもあります。
こうした判断が、全体の予算バランスを崩さず理想の住まいを実現する大切な要素となります。
リノベーションの計画では、目先のデザインや設備仕様だけでなく、完成後の生活を具体的にイメージすることがとても重要です。
たとえば「朝の家事動線」「在宅ワークの場所」「収納の使い方」を考えるだけでも、必要な工事と不要な工事が見えてきます。
将来の暮らしまで想定しておくと、後からリフォームを追加するリスクを減らすことができ、無駄なコストを避けられます。
この考え方は、1500万円というまとまった予算を最大限に活かすうえで欠かせません。

マンションのリノベーションでは、戸建てにはない特有の制約がいくつも存在します。
この制約を正しく理解していないと、見積もりが膨らんだり、工事計画が後戻りになったりするリスクがあります。
たとえば、水回りの移動が制限されるPS(パイプスペース)、共用部と管理規約による申請制限、二重床・遮音性能といった技術的な条件は、すべて工事費に直結する要素です。
逆に、こうした条件を踏まえて設計することで、ムダな費用を抑えながらも快適な空間をつくることができます。
マンションでは、水道や排水管のルートが**PS(パイプスペース)**を起点に決まっているため、水回りの移動には大きな制限があります。
この制約を無視してキッチンや浴室を大きく移動しようとすると、床を大規模に壊して配管をやり直す必要が生じ、数十万〜100万円以上の追加費用になるケースも少なくありません。
特に古いマンションでは配管スペースに余裕がないことも多く、現地調査と設計段階での判断が非常に重要です。
PSまわりを極力動かさず、既存の配管位置を活かしたレイアウト変更がコストを抑える基本になります。
マンションは、各住戸の内装部分であっても共用部との接点が多く、工事内容によっては管理組合の承認が必要です。
たとえば、窓の交換、玄関ドアの変更、外壁に接する工事などは、基本的に共用部にあたるため、自由に施工することはできません。
また、工事時間帯・騒音・資材搬入ルートに制限があるマンションも多く、工程の制約=工期とコストの増加につながる場合があります。
この部分を事前に確認せずにプランを進めてしまうと、着工直前に変更を迫られることもあるため、管理規約の読み込みと設計のすり合わせが必須です。
マンションの床構造には、「二重床」と「直貼り(直床)」の2種類があります。
特に二重床は遮音性能や配管ルートに優れる反面、解体・復旧のコストが高くなる傾向があります。
さらに、管理規約で**遮音等級の基準(L-45など)**が定められている場合、これを満たすための床材選定や施工方法にもコストが上乗せされます。
この部分をあらかじめ設計段階で織り込んでおくことで、予算オーバーを防ぎ、施工中の仕様変更を避けることができます。
外部リンク:→住宅金融支援機構 フラット35リノベ(公式)

リノベーションでは、「どこにお金をかけるか」だけでなく、「何をやらないか」も最終的な満足度を大きく左右します。
すべてを詰め込んだプランは一見理想的に見えますが、予算を超えたり、仕上がりの質が分散してしまうリスクがあります。
逆に、不要な部分を思い切って削ることで、限られた予算でも理想の空間にしっかりと投資することが可能です。
この「やらない選択」が、最終的に住み心地の良さと完成度を高めるポイントになります。
内装デザインは空間の印象を大きく変える要素ですが、装飾や素材に費用をかけすぎると、肝心な基盤部分に予算が回らなくなることがあります。
特に、天井造作・間接照明・特注家具といった“見た目重視”の要素は、少し絞るだけで大きなコスト削減が可能です。
デザインを削るのではなく、「使う場所」と「魅せる場所」を明確に分けることで、全体の完成度を高められます。
たとえば、リビングを中心にデザイン性を高め、寝室や廊下はシンプルな仕様に抑えるだけでも、予算内で十分洗練された印象に仕上げることができます。
工事を始めてから「イメージと違った」というトラブルは、リノベーションでは珍しくありません。
このズレを防ぐには、プランの段階でイメージを正確に共有することが欠かせません。
リクテカでは、3DCADによる「見える打ち合わせ」を活用し、空間の完成イメージを立体的に確認しながら優先順位を整理します。
この方法を使えば、“やらない部分”を視覚的に納得したうえで決められるため、不要な工事を減らし、予算を有効に活用できます。
今の暮らしだけでなく、将来のライフスタイルの変化を見据えて計画することも、無駄な工事を減らす有効な方法です。
たとえば、子どもの独立や在宅ワークの有無、老後の生活動線などを考慮すれば、今やるべき工事と、後でも対応できる工事を切り分けられます。
こうすることで、1500万円の予算を長期的な価値に変える設計が可能になります。
“今の理想”に偏らず、“これからの暮らし”まで想像して計画することが、賢いリノベーションの第一歩です。

「やらない選択」は、我慢ではなく価値を最大化する設計戦略です。
1500万円という予算でも、生活の核となる動線や水回り、見えない基盤部分を優先すれば、満足度の高い住まいに近づきます。
特注や過剰な演出はポイント使いにとどめ、配管・遮音・管理規約といったマンション特有の条件を早期に織り込むことが、コスト膨張の抑止につながります。
3DCADで仕上がりを共有しながら優先順位を固めれば、不要な工事を自然に減らせます。
補助金・控除・ローンを正しく活用すると実質負担を下げる余地も生まれます。
